2015年 04月 21日
荷車 |
火曜日。10時20分起床、曇り。缶詰のカレー食べる。
11時10分出る。浦和、勤め。昼はいこい食堂へ。豚肉とキャベツのみそ炒め定食650円。おいしい。1日、11日、21日に行くともらえる50円分のサービス券、初めてもらった。緑。
勤め20時半まで。終え、ひとりあじへ。きゅうりジャバラ漬け、厚揚げチーズ焼き、ポテトサラダ。
22時過ぎ出る。北浦和駅まで歩く。
23時20分帰宅。
窪川鶴次郎『新浅草物語』、「夜更けの風呂」の末尾、「わたし」は転居のため荷車に荷物を積み、頼む相手もなく一人で田端の急な坂を下りることになる。
「自分で車をひくということが、自分の現在の生活にこんなに深くクサビを打ち込むような経験をさせるとは思わなかった。それは単なる生理的な恐怖ではなく、何ら自分に拠りどころをもっていないみじめな孤独の形を変えたものとしてわたしを捉えた。
いくら梶棒を上げて車の尻を地べたに押しつけるようにしても車に押されて宙を駆けだしそうになる。曲がり角は無理に止めようとすればかえって崖のうえに突き飛ばされるので、止めるかわりに梶をグッと右へ曲げてうしろへよりかかるようにして一散に走った。車は勢いがついてアッというまもなくわたしを投げ出したのであった。」
阿部知二の長編『冬の宿』の結びを思い出す。かつての下宿先の主人であった嘉門と競馬場で再会した「私」は、料理屋での一泊の後、付き添って嘉門の家に行くと、そこは妻のまつ子によってすっかり片づけられ、娘も親戚の家に預けられて、貧民窟への転居がすでに決まった後だった。
『「失敬!」と嘉門が叫び、「さよなら」と低くまつ子が頭をさげながらいった。と思うと、荷車は石塊の多い凸凹の坂路を、ガラガラと鳴って降りはじめた。おそろしいほどの速さであった。さすがに巨大な嘉門の重量も、そのあおりを食って、梶棒の為に、二三度梃子で弾ね返されるように、宙にふわりと浮くのが見えた。それをグンと彼が押えると、また恐ろしい急速度が加わって、まっしぐらに車は転げおちた。まつ子は、そのときにはねとばされて坂をころがっていった山高帽を拾って小脇に抱えると、小走りにはしりながら、後もみずに一生懸命に、車と嘉門の後を追ってかけおりて行った。まもなく、角の石垣の蔭に、まず嘉門が、それからまつ子が、隠れて行ったが、車の音はしばらくつづいてきこえた。』
急な下り坂で荷車を引く、それがどのような負荷を与えるのか。よくわからない。宙に体が浮きそうになるものなのか。いつかやってみたい。
11時10分出る。浦和、勤め。昼はいこい食堂へ。豚肉とキャベツのみそ炒め定食650円。おいしい。1日、11日、21日に行くともらえる50円分のサービス券、初めてもらった。緑。
勤め20時半まで。終え、ひとりあじへ。きゅうりジャバラ漬け、厚揚げチーズ焼き、ポテトサラダ。
22時過ぎ出る。北浦和駅まで歩く。
23時20分帰宅。
窪川鶴次郎『新浅草物語』、「夜更けの風呂」の末尾、「わたし」は転居のため荷車に荷物を積み、頼む相手もなく一人で田端の急な坂を下りることになる。
「自分で車をひくということが、自分の現在の生活にこんなに深くクサビを打ち込むような経験をさせるとは思わなかった。それは単なる生理的な恐怖ではなく、何ら自分に拠りどころをもっていないみじめな孤独の形を変えたものとしてわたしを捉えた。
いくら梶棒を上げて車の尻を地べたに押しつけるようにしても車に押されて宙を駆けだしそうになる。曲がり角は無理に止めようとすればかえって崖のうえに突き飛ばされるので、止めるかわりに梶をグッと右へ曲げてうしろへよりかかるようにして一散に走った。車は勢いがついてアッというまもなくわたしを投げ出したのであった。」
阿部知二の長編『冬の宿』の結びを思い出す。かつての下宿先の主人であった嘉門と競馬場で再会した「私」は、料理屋での一泊の後、付き添って嘉門の家に行くと、そこは妻のまつ子によってすっかり片づけられ、娘も親戚の家に預けられて、貧民窟への転居がすでに決まった後だった。
『「失敬!」と嘉門が叫び、「さよなら」と低くまつ子が頭をさげながらいった。と思うと、荷車は石塊の多い凸凹の坂路を、ガラガラと鳴って降りはじめた。おそろしいほどの速さであった。さすがに巨大な嘉門の重量も、そのあおりを食って、梶棒の為に、二三度梃子で弾ね返されるように、宙にふわりと浮くのが見えた。それをグンと彼が押えると、また恐ろしい急速度が加わって、まっしぐらに車は転げおちた。まつ子は、そのときにはねとばされて坂をころがっていった山高帽を拾って小脇に抱えると、小走りにはしりながら、後もみずに一生懸命に、車と嘉門の後を追ってかけおりて行った。まもなく、角の石垣の蔭に、まず嘉門が、それからまつ子が、隠れて行ったが、車の音はしばらくつづいてきこえた。』
急な下り坂で荷車を引く、それがどのような負荷を与えるのか。よくわからない。宙に体が浮きそうになるものなのか。いつかやってみたい。
■
[PR]
by w-nemunemu
| 2015-04-21 01:11
|
Comments(0)